BTOパソコンにとって心臓にも等しい電源ユニット。もっとも重要な構成パーツといってもいいでしょう。
なぜなら、最上位のCPUやGPUを搭載しても、それに見合った電源ユニットを搭載しなければ、高性能PCもまともに機能しないからです。
たとえば、BTOパソコンでゲーム実況や動画エンコードなどを目的に、高性能なPCをオーダーするなら、電源ユニットの容量は、650W以上が適正になります。
電源の容量は、動作や寿命にも大きくかかわってくるので、低品質・低容量の電源ユニットを選んではいけません。
この記事では、電源ユニットを購入する際の基礎知識と選び方を、わかりやすく解説しまとめました。BTOパソコンの電源選びに関して、お悩みや注意点を解決します。
【1】電源ユニットってなに?
電源ユニットは、PCを構成するCPUやグラフィックボード、メモリやSSD・HDDなどの主要構成パーツから、ファンやUSBなどの出力にも電力を供給するPCの主要パーツです。
PC電源ユニットでは、家庭用コンセントから出力されているAC100V(ボルト)の交流電圧を直流電流(DC)に変換整流したのち、個々のパーツに合わせて変圧して供給します。
したがってどんなに高性能なパーツでも電源無しでは動きません。そのため電源ユニットに求められる性能は、必要な電力を十分に余裕をもって供給できることが必要です。
人間にたとえるなら、電源ユニットは「心臓」で電流は「血流」といえるでしょう。たとえば「脳や目」に等しいCPUやGPUは、高い電力が必要な主要パーツで必要な電流が供給されなければ、本来の性能は発揮されません。
そのため電源ユニットには、常に大きなストレスがかかることが想定され、容量不足になるとPCが動作不良を起こし、スピードが落ちたり、PCがフリーズしたりするようなこともあります。
つまり、電源ユニットの選択を間違うと、PCの故障原因になり、最悪の場合、PCの寿命まで縮めてしまいかねません。
容量が大きく高品質な電源ユニットは、価格もそれなりに高くなりますが、PCを長く快適に使うためには、電源ユニットの選択がとても重要だといえるでしょう。
電源ユニットの種類
PCに使われる電源ユニットには規格に沿って作られたいくつかの種類があります。
PC電源は、PC構造の規格ATX(Advanced Technology eXtended)をもとに、ATX電源、EPS電源、SFX電源、FlexATX電源、TFX電源など、PCケースの大きさやマザーボードの規格に合わせたものがあり、適切なユニットを選ぶ必要があります。
たとえば自作PCを作る場合、電源ユニットを選ぶ際は、PCケースとマザーボードの規格に合わせて、必要な容量を備えたモノを選ばなければなりません。
BTOパソコンの場合は、各パーツの組み合わせに適切な電源ユニットが用意されており、標準のモノか、それより上のユニットから選ぶということになります。
【2】80PLUS認証とは?
電源ユニットの性能は、電圧の変換効率の割合ではかることができます。
ATX電源が作られ始めた当初、PC電源の変換効率は、一般的に60%から70%程度でした。現在は、PC電源の品質と性能を表す規格「80 PLUS 認証」の推進により、変換効率80%を超える高効率の電源が主力になりました。
「80 PLUS 認証」には、厳密にランク分けされており、各グレードはベーシックな「80plus Standard」から「80plus Titaniumu」まで、6タイプあります。
80 PLUSグレード | 定格10% 変換効率 |
定格20% 変換効率 |
定格50% 変換効率 |
定格100% 変換効率 |
Standard | – | 80% | 80% | 80% |
Bronze | – | 82% | 85% | 82% |
Silver | – | 85% | 88% | 85% |
Gold | – | 87% | 90% | 87% |
Platinum | – | 90% | 92% | 89% |
Titanium | 90% | 92% | 94% | 90% |
たとえば出力50%時の変換効率の違いを比べて見ると、Standardだと80%以上の変換効率ですが、Titaniumuになると94%以上の変換効率となり、14%もの差が生じます。
ランクが上がれば、効率も良くなるのですが、グレードが上がると価格も価格なります。そのため、BTOパソコンの標準搭載電源は、構成パーツに合わせてBRONZE~GOLDを使うのが一般的です。
BTOパソコンでカスタマイズした時は、個々のパーツが必要とする電力に最適化された電源ユニットを選びましょう。
交換率が高いメリット
PC電源は、電流の交換率が高いとPC本体や稼働時に多くのメリットがあります。
変換効率が高いと電力のロスが少なくなり、電源の発熱は低く抑えられます。発熱による電源本体の劣化を防ぎ、他の部品への悪影響もが抑えられてPCの寿命も長くなります。
また、ファンの稼働が少なく静かになり仕事やゲームに集中できます。発熱やファンの駆動が抑えられることで、使用電力量も下がり省エネ(80PLUS認証 本来の目的)にもつながっています。
BTOパソコンでハイスペックモデルを選んだり、カスタマイズでCPUやグラボをグレードアップした時は、PCを長く使えるように電源のランクアップがおすすめです。
【3】電源ユニットの注意点
少し軽視されがちな電源ユニットですが、これまでの解説でPCの寿命まで左右する、とても重要なパーツであることがご理解いただけたと思います。
BTOパソコンでは、各モデルに標準の電源ユニットは、その構成パーツで利用するに適正なスペックのものが搭載されています。
多くのBTOショップでは、グレードダウンの電源を選べないようになっていますが、CPUやグラボのカスタマイズにより、結果として電源が追い付かなくなることがあります。
結果として高負荷時に性能アップどころか、保護機能が働きスピードダウンしたり、コマ落ちや動作不良が起こることもあります。
「80 PLUS 認証」のグレードアップをしたが、値段を抑えるためにワット数を下げる(容量ダウン)などすると、思い通りに動かなくなってしまうこともあります。
BTOパソコンで電源をカスタマイズするときは、PCに合わせた適切な電源ユニットを選び、トラブルなく使えるPCを構築しましょう。
【4】値段設定について
電源ユニットの価格設定は幅広く設定されており、一見すると選択肢は豊富に思えます。また、無理な運用をしなければ、安くても長く使える優秀なものが増えています。
たとえば、BRONZEグレードで5,000円前後のものから、10,000円を超えるGOLDグレード、また、30,000円台にまで達するTITANIUMグレードまでありますが、一般的なゲーミングやエンコードなどは、10,000円台のGOLDグレードのコスパが高く優秀なモノが揃っています。
電源は、上位のモノが優れていることは間違いありませんが、ミドルレンジの製品で各パーツを十分に機能させることが可能です。
電源ユニットは、値段と性能のバランスをしっかり検討して選びましょう。
【5】電源ユニットの選び方
電源ユニットを購入の際に間違いが無いように、選び方とチェックポイントをご紹介します。
PCカスタマイズの際に参考にして下さい。
サイズの確認
電源ユニットには、規格ごとに種類がありサイズも異なります。表にまとめましたので、選ぶ際の参考にご覧下さい。
電源ユニットの規格 | 電源のサイズと特徴 |
ATX | 多くのデスクトップPCの主力電源(現在の主流) |
EPS(ATX強化版) | サーバー・ワークステーション向け、ATXの強化仕様 |
SFX(micro ATX) | 小型スリムケース用の小型ATX(動作不良時の交換時に使用が一般的) |
Flex ATX | SFX電源をさらに小型化し薄型化した電源、FlexATXケース・MBと組み合わせて使用する |
TFX | ブックシェルフ型の小型デスクトップ用の専用電源ユニット(動作不良時の交換時に使用が一般的) |
ケースサイズに合わせて選ぶことはもちろん、CPUやGPUなど使用パーツの実効に十分な容量確保も重要なポイントです。
電源容量をチェックする
電源ユニットの購入でポイントになる容量は、3つのレンジの中から、該当するPCのパーツ構成を勘案して選びましょう。
電源容量(W) | 該当するPCのパーツ構成 |
エントリー (300W以下) |
エントリーモデルでローエンドCPUとグラボの組み合わせなどで構成。3Dゲームやエンコード、ゲーム実況などはしない人向け。多数のUSB接続をしない。 |
ミドルレンジ (300から600W) |
ミドルレンジから上のCPUとGPUを使用した構成。3Dゲーム、ゲーム実況の配信などにも利用可、USBの多数接続も可能です。 |
ハイエンド (600W以上) |
ハイエンドCPU+GPUを組み合わせた構成。ハード使用のゲームストリーマーは最低でもこのレンジを選択。グラボの2枚挿しは850W以上を検討。 |
ハイエンドのグラボを使用する場合、CPU、メモリ、各ストレージ、グラフィックボードの必要電力のトータルを試算してから、電源ユニットを選ぶことをおすすめします。
80PLUS認証を目安に
お家のコンセントに繋いで使う電力は、交流電流(AC)で給電されているので、PCでそのまま使うことができません。
交流電流(AC)は、電源ユニットで直流電流(DC)に変換して整流変圧を行い、それぞれのパーツが必要な電圧に合わせて給電されます。
電源ユニットは、電流をACからDCに変換する際に、発熱という形でロスをしますが、電源ユニットの製品に変換割合が「80%以上である」と示した認証したが「80PLUS認証」です。
ひと昔前までは、80%以上の変換率でも相当に高効率な電源だったのですが、現在は、90%に達する「80PLUS GOLD」でも、10,000円くらいから手に入るようになりました。
電源ユニットを高品質なものに変えるだけで、電気代も抑えられ、発熱が少ない分PC各パーツの寿命も長くなります。
コストパフォーマンスに優れたグレードは「80PLUS GOLD」です。積極的に検討しましょう。
保証期間
電源は、PCに限らず保証期間が長く重いものほど、安定した持続性を発揮するといわれています。
PCの電源ユニットで主に使われているスイッチング電源では、コンセントから入力された交流電流をコンデンサやトランスを組み合わせた回路で変換整流、変圧します。
この際キーパーツとなるアルミ電解コンデンサやトランスなどアナログパーツの製品は、日本製が世界的にも大変優れており、安定性と長寿命を誇っています。
一日の長といいますが、日本製のコンデンサやトランスなど、電源の製造技術は、昭和の時代に通信機や高級オーディオの開発時にノウハウが蓄積され昇華したものです。
PCパーツ製造で世界的に優れた実績を持つ、台湾や中国製のコンデンサ・トランスを使った電源よりも、アナログパーツにおいては、日本製部品を使った製品が長持ちする傾向にあるようです。
電源ユニットは、保証期間の長いものを選びましょう。
【6】電源ユニットまとめ
電源ユニットは、BTOパソコン・自作パソコン・メーカー製パソコンのいずれにおいても、重要な位置づけの主要パーツです。
CPUやグラフィックボードはもちろん、生命線となる個々の冷却ファン、メモリやストレージなどは、どんなに性能が良くても給電が間に合わなければ、失うことにもなりかねません。
特にデータを読み書きしている最中やゲームのエキサイティングな場面で、電力不足でPCが不安定になるなどしたら、目も当てられません。
PCの心臓部ともいえる電源は、この数年で品質の良いグレード「80 PLUS GOLD」がとても安くなり、長寿命のものが増えました。
新しくPCを構築する際や、保守のために交換する際もぜひグレードアップを検討し、しっかり見極めて選びましょう。